長半纏ながばんてん)” の例文
或る日、おせんが表で子供を遊ばせていると、長半纏ながばんてんにふところ手をした男が通りかかり、こっちを見て吃驚したように立停った。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と、泰軒先生は、あいかわらず、肩につぎのあたった縦縞の長半纏ながばんてん、襟元に胸毛をのぞかせて、部屋のまん中にすわっている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
長半纏ながばんてんを引っかけて、胴金入どうがねいりの凄いやつでも引提げながら悠々ゆうゆうと立ち出でるかと思うと、これは寺子屋の師匠そっくりの長身温和な浪人風——気分から、応対まで、すっかり当てが違って
先生の大喝に、屑竹はヒョックリ起きあがり、長半纏ながばんてんの裾で、ならべた膝をつつみこみ、ちぢみあがっている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ずんぐりした躯つきで、めくら縞の長半纏ながばんてんを片前さがりにだらしなく着、よれよれの平ぐけをしめていた。
愚楽老人をじろりと見やって、埃だらけの長半纏ながばんてんの裾をはね、ガッシと組むおおあぐら——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
年は二十七八にみえる、めくら縞の長半纏ながばんてんにひらぐけをしめているが、着崩れで胸も足も裸同様であり、元結が切れてさんばら髪になった頭から、顔の半面、胸まで血に染まっていた。