そうして美を最も深く味わっている茶人たちが、この弊をかつて酵し今も酵しつつあるのである。「楽」と銘ある茶碗の如き、ほとんど醜くなかった場合はない。
その醜さについて、また醜さを酵した事情について、私の心は平らかではいられない。罪を見て安らかでいられる僧があろうか。器が悩むが故に私の心もまた悩む。
そこには人間と人間との反目が露出され、続いては人間と自然との疎遠を酵した。その結果、心は正から離れ、物は美から遠ざけられた。すべてのものに和合がない。
そこに見られる美は、驚くべき熟練の所産である。それを一日で酵された美と思ってはならぬ。
金権下に激しい上下の反目を酵した今日の状態といかに異なる光景であろう。工藝に現れたすべての醜さは一つに瓦解した社会組織に起因する。そこには暴虐があって相愛がない。