昔は自分なぞよりはもう一層たちの悪い無頼漢ならずもののようにも思っていた遠山金四郎とおやまきんしろうが今は公儀の重い御役おやくを勤め真実世の有様を嘆き憂いているかと思えば
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こうなるからは誰ぞ公辺こうへん知人しりびとを頼り内々ないない事情を聞くにくはないとかね芝居町しばいまちなぞではことほか懇意にした遠山金四郎とおやまきんしろうという旗本の放蕩児ほうとうじが、いつか家督をついで左衛門尉景元さえもんのじょうかげもとと名乗り
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)