通行とほ)” の例文
さらでだに虫の音も絶え果てた冬近い夜のさびしさに、まだ宵ながら家々の戸がピタリとしまつて、通行とほる人もなく、話声さへ洩れぬ。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
松太郎の通行とほる度、店先にゐさへすれば、屹度この眼で調戯からかふ。落花生なんきんまめの殻を投げることもある。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
前日通行とほつた時は百二三十戸も有らうと思つたのが数へて見ると六十九戸しか無かつた。それが又きたない家許りだ。松太郎は心に喜んだ、何がなしに気強くなつて来た。かれには自信といふものが無い。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)