讃美者さんびしゃ)” の例文
彼は常に中世紀の讃美者さんびしゃであった。その時代には美が最も厚く実現されていたからである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
彼は、つい十分ほど前まで、今日の園遊会に集まっている、すべての人々は自分の金力に対する讃美者さんびしゃであると思っていた。讃美者ではなくとも、少くとも羨望者せんぼうしゃであると思っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
(間)ね、思ってもご覧なさい、アーニャ、あなたのお祖父じいさんも、ひいお祖父さんも、もっと前の先祖も、みんな農奴制度の讃美者さんびしゃで、生きた魂を奴隷どれいにしてしぼり上げていたんです。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
僕は死をよいものだと思った、とは言っても、決してひとの命を安く見ていい加減に取扱っているのでも無いし、また、あのセンチメンタルで無気力な、「死の讃美者さんびしゃ」とやらでもないんだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)