譫妄せんもう)” の例文
航海中、一時、快方に向いたが、印度洋の暑気にやられて譫妄せんもう状態に陥り、横浜入港と同時に、手足を縛って脳病院に送り込むという狂人同様の取扱いを受けた。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
おさん自身でも止めることのできない、あの激しい陶酔がはじまると、おさんはそこにいなくなってしまう。完全な譫妄せんもう状態で、生きているのはその感覚だけだ。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「なるほど、しかし、ニコル教授のような間違いだらけな先生でも、これだけは巧いことを云いましたな。結核患者の血液の中には、脳に譫妄せんもうを起すものを含めり——って」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
すっかり熱にうかされてしまって、譫妄せんもう状態に近いようなようすになり、うつろな視線をあてどもなく漂わせながら、のろのろした声で、切れぎれにつぶやきつづけるのだった。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)