西谷にしたに)” の例文
水道の取入口も過ぎ、西谷にしたに迎帆楼げいはんろうの前も過ぎた。あの前での昨日の人だかりというものは昼の花火の黄煙菊おうえんきくよりもほこりをあげた。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
道のけわしさも身のつかれも知らない容子である。そして静かに明けて来た伊吹の西谷にしたにを行くほどに、ここはもう彼にとって母のふところかのような心地がするらしかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おっ! 笠松先生! 西谷にしたにです」
公園からだらだらのさか西谷にしたにの方へ、日かげをえらみ選み小急ぎになると、桑畑の中へ折れたところで、しおらしい赤い鳳仙花ほうせんかが目についた。もう秋だなと思う。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)