藪柑子やぶかうじ)” の例文
よく見ると白い寂しい茸が五六本生えてゐて、うすぐもりの日かげが何時いつの間にか疎いひかりとなり、藪柑子やぶかうじのあたまを染めてゐる。
名園の落水 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
龍の髭の紫、千兩、萬兩、藪柑子やぶかうじ、さては南天の白と紅。隱れたところにある庭の隅なぞに、それ等の草木の實を見つけるのはうれしい。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それは暗いゴチツク建築のなかを辿つてゆくときのやうな、犇々ひし/\とせまつて來る靜寂と孤獨とを眼覺ました。杉の根方には藪柑子やぶかうじ、匂ひのないのぎ蘭、すぎごけ、……數々の矮小わいせうな自然が生えてゐた。
闇への書 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)