が、元より「雪の十七番」の因縁いんねんなぞは心得てゐる筈がなかつた。だからこの蒟蒻問答こんにやくもんだふ雲水うんすゐめいた相手の顔を眺めながら、「わからないよ」と簡単な返事をした。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)