苦心惨憺くしんさんたん)” の例文
旧字:苦心慘憺
実によけいな心配をしたもので、お手前物の百味箪笥の引出しをいちいちあけて、薬を調べるような心持で、僅か大衆の一句のために、道庵先生が苦心惨憺くしんさんたんをはじめました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
畑に顛落てんらくして、つき指をしたり、苦心惨憺くしんさんたん、やっとの思いで妻子のもとに帰ったのだが、妻は尋常の夫の放蕩ほうとうとのんきに思いこんでいるらしく、チクチク皮肉をいうばかりか
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
学校の講堂もそうである。この事については学長はじめ必ず苦心惨憺くしんさんたんたるものがあるであろうが、ここにこれを明言するだけの成算が未だ立っておらないのであろうかと思うのである。
始業式に臨みて (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「おれはきょうまで、こうして、少しもつかれずにいたのは、まったく、かれが苦心惨憺くしんさんたんして、朝ごとにしょくを口にいれてくれたおかげだ。どこかそこらにいるにちがいないからさがしてくれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)