自虐じぎゃく)” の例文
そんな光景を立ち去らずにあくまで見て胸を痛めているのは、彼には近頃自虐じぎゃくめいた習慣になっていた。惻隠そくいんの情もじかに胸に落ちこむのだ。以前はちらと見て、通り過ぎていた。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
一種の自虐じぎゃくだが、当人には、人の窺い知れない自悦じえつもある。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自虐じぎゃくめいたいやな気持で楽天地から出てきたとたん、思いがけなくぱったり紀代子に出くわしてしまった。変な好奇心からミイラなどを見てきたのを見抜かれたとみるみるあかくなった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
それは何か自分の指を噛んでしまいたいような自虐じぎゃくめいた快感であった……。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
だから、今日の寺田は一代の一の字をねらって、1の番号ばかし執拗しつように追い続けていた。その馬がどんな馬であろうと頓着とんちゃくせず、勝負にならぬような駄馬バテであればあるほど、自虐じぎゃくめいた快感があった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)