耳門くぐりもん)” の例文
れちがう事が出来ないくらいな狭い道で、五六歩行くごとに曲っているが、両側とも割合に小綺麗な耳門くぐりもんのある借家が並んでいて
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
新三郎はそこで起きておかへ眼をやると、二重の建仁寺垣があって耳門くぐりもんが見えていた。それは確に飯島の別荘のようであるから
円朝の牡丹灯籠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
微暗うすぐらい門番のへや燈火あかりが見えた。真暗い空から毛のような霧雨きりあめが降っていた。書生の体はもう耳門くぐりもんから出た。主翁ていしゅもそのあとから耳門くぐりもんを出たが、ほっとしたような気になって心がのびのびした。
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)