老母ばあ)” の例文
私は老母ばあさんのぶつぶつ言っているのを尻目しりめにかけながら座敷に上って喪心したようにどかりと尻を落してぐったりとなっていた。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
老母ばあさん一人の男やもめ——そのおばあさんが丹精の継はぎの膝掛をねて、お出迎え、という隙もありゃしますまい。
喜久井町きくいちょうにかえると、老母ばあさんは、膳立ぜんだてをして六畳の机の前に運んで来た。私はそれを食べながら、かねの工面をして、出かけようとすると
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
一時過ぎてから門をくぐって庭から廻り四畳半の老母ばあさんに聞えぬようにお前の枕頭まくらもとと思う六畳の縁側の戸を叩くと
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)