翕然きふぜん)” の例文
殊に、征韓論で破れた板垣退助が、立志社を組織し、国会開設の建白を成すや、人心が翕然きふぜんとして集り、自由民権運動が、天下を風靡した。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
世間の人々の嘲笑てうせうおもんぱかつて、小さくなつて、自分の失恋を恥ぢ隠さうとしてゐたのが、世間の同情が、全く予期に反して、翕然きふぜんとして、自分の一身に集つて来るらしいのを見て取ると
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
天下翕然きふぜんとして一中心に集り、榮譽の源泉に向て功名の心を生じ、我藝術を將さに衰へんとしたるに挽囘して、更に發達の機を促すのみならず、人心の帝室を慕ふに一層の熱を増して
帝室論 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
よれからむ生皮いきがはの帆布は翕然きふぜんとしてひとつの怪像となる。
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)