絛虫さなだむし)” の例文
墓石のような顔色をした彼の額には青黒い静脈が絛虫さなだむしのようにうねって、高くつき出た頬骨の下の青白いくぼみには死の影が浮動している。
息を止める男 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「何でも男らしくないもんだろう。——君そこのところはまだ煮えていないぜ。そんなのを食うと絛虫さなだむしくぜ」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
馬でも牛でも熊でも狼でも自分の腹の内を通り抜けさせてやる気がある。人の腹の中が好いの悪いのと注文を云って居る絛虫さなだむし蛔虫かいちゅうのようなケチなものではない。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
絛虫さなだむしは何れ位長いものかと思って、瓶の中から出して見た。三上山みかみやま百足むかでじゃないが、全く長いものだ。室を一周回ひとまわり取巻いても未だ余ってる。絨毯が台なしになった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)