細作しのび)” の例文
結局は敵の間者かんじゃ細作しのびのうたがいを以って彼を館の内へ無理無体に引き摺り込もうとするらしいと、侍女は小坂部にささやいた。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
細作しのびは人並みに仕遂しとげたが、抜き合わせたら十のうち十までケシ飛ぶこと請合の非力者の腕、滅多に拳を刀に近づけるなよ、危ないから」
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
ことにその行方を知りたがって細作しのびをこしらえておく神尾派の者までが、ついにその消息を知ることができませんでした。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
細作しのびかしら?——今の話が聞えたであろうか? もし、聞えたとすれば一党の破滅になる——いいや、聞えても、そこまで判るまい。いいや、聞えはすまい。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「自分は決して、細作しのびのものではありません。……実は」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まして間者とも細作しのびとも確かに見きわめた証拠もないのに、あまりに物々しい詮議立ては、日本の侍の器量も推し測られて、異国への聞こえも恥ずかしい。のう、采女。そなたは何と思うぞ。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)