粗忽千万そこつせんばん)” の例文
粗忽千万そこつせんばんのことながら、その手形というものを途中で失うて困難の身の上、何と御内儀、よい知恵はござるまいか」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
粗悪な紙に誤植だらけの印刷も結構至極と喜ぼう。それに対する粗忽千万そこつせんばんなジゥルナリズムの批評も聞こう。同業者のよしみにあんまり黙っていても悪いようなら議論のお相手もしよう。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
手前の外には、こう、誰一人拝見をいたしておりますものがございません。ほい、こりゃ違ったそうな、すれば、大方、だろうぐらいに考えて風説をいたしますのを、一概にそうと心得て粗忽千万そこつせんばんな。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの際、紛失したのか、或いはここを出て暫く行く間に取落しでもしたものか、いずれにしても、粗忽千万そこつせんばんとがは免れない。隙のないようでも、若い者の手はどこか漏れるところがある。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)