私宅うち)” の例文
互に私宅うちへ訪ねて行く事なども滅多にない。彼はこの村に福富の外に自分の話相手がないと思つてゐる。これは實際である。そして、決してそれ以上ではないと思つてゐる。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
私宅うちだって金庫を備えつけて置くほどの酒屋じゃアなし、ハッハッハッハッハッハッ。取られる時になりゃ私のとこだって同じだ。大井さんは済んだとして、あとの二軒は誰が行くはずになっています
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それは精密な時刻を知るためよりもむしろ自分の歩いて行く方向を決するためであった。帰りに吉川の私宅うちへ寄ったものか、止したものかと考えて、無意味に時計と相談したと同じ事であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
福富の欠勤の日は、甲田は一日物足らない気持で過して了ふ。それだけの事である。互に私宅うちへ訪ねて行く事なども滅多にない。彼は、この村に福富の外に自分の話対手がないと思つてゐる。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)