石城しき)” の例文
今では、宮廷より外には、石城しきを完全にとり廻した豪族の家などは、よく/\の地方でない限りは、見つからなくなつて居る筈なのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
世間の氏々の上は大方もう、石城しきなどきづまはして、大門小門を繋ぐと謂つた要害と、装飾とに興味を失ひかけて居るのに、何とした自分だ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
そうして、其処から、しきりに人が繋っては出て来て、石をく。木をつ。土をはこび入れる。重苦しい石城しき。懐しい昔構え。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
屋敷を構えて居た蘇我臣そがのおみなども、飛鳥の都では、次第に家作りを拡げて行って、石城しきなども高く、幾重にもとり廻して、凡永久の館作りをした。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
奈良の都には、まだ時おり、石城しきわれた石垣を残して居る家の、見かけられた頃である。度々の太政官符だいじょうがんぷで、其を家の周りに造ることが、禁ぜられて来た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
こんな誓ひが人とものとの間にあつた後、村々の人は、石城しきの中に晏如として眠ることが出来る様になつた。さうでない村々では、何者でも垣を躍り越えて這入つて来る。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)