睿智えいち)” の例文
言葉は私を言い現わしてくれないとしても、その後につつましやかに隠れているあの睿智えいち独子ひとりごなる暗示こそは、裏切る事なく私を求める者に伝えてくれるだろう。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この褐色カプシン猴は猴類でもっとも睿智えいちのものと言うべく、野生のままでは大いにその睿智と模倣力を揮うべき事物に接せず、したがってやや低能なるも、人間にんかんに棲み
そこには動かすことの出来ない実際的睿智えいちが動いているのを私は感ずることが出来る。おもうに動物には、ダーウィンが発見した以外に幾多の本能が潜んでいるに相違ない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ロメーンズいわく、馬は虎獅等の大きな啖肉獣ほど睿智えいちならず、食草獣のうち象大きい馬より伶俐れいりで象ほどならぬが驢も馬より鋭敏だ、しかしその他の食草獣(牛鹿羊)よりはやや馬が多智だ。
彼は物を見るところに物を捕える。物そのものの本質に於てこれを捕える。そして睿智えいちの始めなる神々こうごうしい驚異の念にひたる。そこには何等の先入的僻見へきけんがない。これこそは純真な芸術的態度だ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)