皺嗄声しわがれごえ)” の例文
復一にはうまいのかまずいのか判らなかったが、連翹れんぎょうの花をへだてた母屋から聴えるのびやかな皺嗄声しわがれごえを聴くと、執着の流れを覚束なくさおさす一個の人間がしみじみ憐れに思えた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
部屋の方からは暫くは何の物音も聞えて来なかったが、やがてピッシャリと障子をしめる音がして「百合枝さん、だれかに感づかれる様なことはしまいね」男の太い皺嗄声しわがれごえが聞えた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
伝五じじいは、懐を大きく、仰天した皺嗄声しわがれごえを振絞って
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)