癖者くせもの)” の例文
三右衛門は思慮のいとまもなく跡を追った。中の口まで出たが、もう相手の行方ゆくえが知れない。痛手を負った老人の足は、壮年の癖者くせものに及ばなかったのである。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
美術家ほど世に行儀しきものなければ、独立ひとりたちてまじわるには、しばしも油断すべからず。寄らず、さわらぬやうにせばやとおもひて、はからず見玉みたまふ如き不思議の癖者くせものになりぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)