猜疑うたがひ)” の例文
『隠せ』——其を守る為には今日迄何程どれほどの苦心を重ねたらう。『忘れるな』——其を繰返す度に何程の猜疑うたがひ恐怖おそれとを抱いたらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
猜疑うたがひ恐怖おそれ——あゝ、あゝ、二六時中忘れることの出来なかつた苦痛くるしみは僅かに胸を離れたのである。今は鳥のやうに自由だ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
蓮太郎——大日向——それから仙太、斯う聯想した時は、猜疑うたがひ恐怖おそれとで戦慄ふるへるやうになつた。あゝ、意地の悪い智慧ちゑはいつでも後から出て来る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)