犬猿けんえん)” の例文
と署長の頭の上で、頓狂とんきょうな声がした。おどろいて署長がうしろを向くと、そこには彼と犬猿けんえんの間にあるK新報社長の田熊氏が嘲笑あざわらっていた。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
というのは先生と我輩とは以上の如く犬猿けんえんの間柄で、一方は民間学者の暴れ者、一方は役人の暴れ者、これを噛み合してみたら面白かろうというので、いわば悪戯者いたずらものどもが
この、金剛寺門前町と鷹匠町がそれで、昔から、犬猿けんえんのあいだがらだったから、やれ、縁日の縄張なわばりがどうのこうの、祭の割り前が多いのすくないのと、しじゅうごたごたをつづけている。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ところが、新田足利の両家は、多年、人も知る犬猿けんえんの仲だ。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)