牙歯きば)” の例文
耳のあたりまで裂けて牙歯きばのある口は獣のものに近く、たかい鼻は鳥のものに近く、黄金の色に光った目は神のものに近い。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ズンと深く食い込んだまま牙歯きばのように立ち、かれは大地に弓なりに仆れています——言うまでもなく日本左衛門に袖をくぐられた当身あてみ! あばらを折られていなければ僥倖ぎょうこうなのです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けものにも角生ひひづめ牙歯きばあるはむかし嗔りしなごりとぞ聞く
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
遠い山々にはまだ白雪の残ったところも有ったが、浅間あたりは最早すっかり溶けて、牙歯きばのような山続きから、陰影の多い谷々、高い崩壊の跡などまで顕われていた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)