燃焼ねんしょう)” の例文
旧字:燃燒
翁はそれがよろこびでこう老いも知らない燃焼ねんしょうに日長もわすれているのだろうか。いや、そんな名利もまったくないのかもしれぬ……。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは映画のフィルムなんですよ。しかもそのフィルムが燃焼ねんしょうを始めたのを急にもみ消したとでも云いましょうか、フィルムの燃え屑なのです。それでも心当りがありませんか」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これこそ人間の知性と情意との一如的いちにょてき燃焼ねんしょうであり、しかも知性をこえ、情意をこえた不可思議な心境の開拓かいたくを物語るものだ、というふうに考えるようになり、自分みずからその心境に近づくために
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「いえ、い、いわなくちゃなりません……」銀五郎は彼の手頸てくびを固く握りしめた。怖ろしい力のふるえが感じられる。その眼は衰えた中にもあらん限りの訴えを燃焼ねんしょうしている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)