滲透しみとお)” の例文
ながいあいだに靴皮を滲透しみとおして、幾らか底を濡らすにちがいないとは、誰でも容易にうなずき得る。
一足外に出ると、外はクラクラするような明るさでとがり切った神経の三人は、思わずよろよろっと立止ってしまった。太陽はえた向日葵ひまわりのように青くさく脳天から滲透しみとおった。
板の間へ掛けた雑巾の跡が直に白く凍る朝なぞはめずらしくない。夜更けて、部屋々々の柱がみ割れる音を聞きながら読書でもしていると、実に寒さが私達の骨まで滲透しみとおるかと思われる……
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
外は黄熟おうじゅくした八月の暑熱が、じりじり大地に滲透しみとおるようであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)