渇仰かっこう)” の例文
純一も東京に出て、近く寄って預言者を見てから、渇仰かっこうの熱が余程冷却しているのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
僕がもし千代子を妻にするとしたら、妻の眼から出る強烈な光にえられないだろう。その光は必ずしもいかりを示すとは限らない。なさけの光でも、愛の光でも、もしくは渇仰かっこうの光でも同じ事である。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
富子も雛吉も十七八の頃からもう真打株になっていて、かれらが華やかな島田に結って、紅いふさのひらめくかんざしをさして、高座にあらわれた肩衣姿かたぎぬすがたは、東京の若い男達の渇仰かっこうのまととなっていた。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)