涓々けんけん)” の例文
一筋の谷川が谿谷たにを貫いてふもとの方へ流れているが、その涓々けんけんたる水音さえ蒼白いもののように思われる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
磨き出したような十日月が涓々けんけんと湖上に照り、風は蘆荻ろてきを吹いて長葉を揺らめかす。四辺𨵙げきとして、聞えるものはオールの音のみ。陶は艇首に坐り、首を垂れて一言も言わぬ。俺も言わぬ。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
落葉松濃かに、黒狐、三毛狐其蔭に躍り、流水涓々けんけんとして処々にはしり、玉蜀黍穫べく馬鈴薯植うべく、田園を開拓するものは賞与の典あり、而も遷徒の土人、新楽土を喜ばずして、帰心督促