海藻うみも)” の例文
明け方の光が微かに、血のなかの海藻うみもにも似る黒髪と、白蝋びゃくろうのような死者の顔とを、無常迅速のことば通り、冷ややかに照らし出している。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背後うしろの押入の大工道具のうちでも一番大切だいじにしている「山吉やまきち」製の大鉄鎚おおかなづちをシッカリと握り締めていたが、その青黒い鉄の尖端からは黒い血のしずくが二三本、海藻うみものようにブラ下っているのであった。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
荒むしろの片すみには、妃の廉子と権大ノ局が寄り添って一つものみたいに居眠っており、小宰相はぽつねんと、ひとり離れて、その身おもな体を海藻うみものように横たえている様だった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さっきの、犬神憑きの女がたおれています。海藻うみものように」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)