けば)” の例文
花は絵のような美しい面を伏せ、オドオドと玉繭の着物のけばをむしりながら消え入りそうに肩をすぼめている。海棠雨に悩む体。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
長いけばのある肩掛をぐるぐる巻きつけ、つばのびらびらしている帽子をかぶり、泥だらけの脚をして、その馬車の中からからだをゆすぶりながら出て来た、乗客のロリー氏は、幾らか
なよげなるけばをもてでらるる
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
黒塗の出格子窓から射しこむ陽の光が、けば立った坊主畳ぼうずだたみの上へいっぱいにさす。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ぼんのくぼの痩せたけば立った首をしょんぼりと垂れ、影うすく、俯向き加減に坐っているようすというものは、さながな区役所の書記が失業して、このごろは踏切へ旗振りに出ていますといったてい
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)