欷歔すゝりなき)” の例文
開いた領飾えりかざりの間から、半分露はれてゐる頸は、劇しい感情の為めに波立ち、欷歔すゝりなきの為めに張つてゐる。先づこんな美しい顔である。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
と答へると、トルストイは急に欷歔すゝりなきをし出した。そして子供のやうにおい/\声を立てて泣き出すので、息子のイリヤも屏風の裏でしく/\泣き入つたといふ事だ。
しかし幸にもこの残雪の泥濘の路を墓参にやつてくるものもなく、あたりはしんとして、唯欷歔すゝりなきの声のみが何物にもさまたげられずに微かに野に近い空気に雑り合つた。
百合子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
女は欷歔すゝりなきをして立ち上つて庵室を出た。
例の如く猛烈な罵詈ばりやら、鈍い不平やら、欷歔すゝりなきやら、悲鳴やらがあつて、涙もたつぷり流された。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
この罪になるといふ言葉に出会つて、かの女はまた欷歔すゝりなきした。
百合子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
幾度いくたびか挫折して飽までも屈せず、力をはからずに、美に向つて進む生涯である。その話の内に、余り悲しい出来事が出て来ると、青年は欷歔すゝりなきをして跡を話す事が出来なくなる。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
女は低い欷歔すゝりなきの音を立てた。
アンナ、パブロオナ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)