かし)” の例文
うちは直ぐ知れた。平らにり込んだかしの木が高く黒板塀の上にそびえているのが、何かの秘密を蔵しているかと思われるような、外観の陰気な邸であった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
越後の奥から信州北部にかけて、かしの実のうてな、我々がドングリのオワンといい、または戯れて花嫁のごうしなどと呼ぶものを、子供は皆ガンモモといっている。
この島には神山と称して、古来手をつけない樹林地が広く、しいかし類の老木が無数に繁茂して、年々の食物は保障せられ、人と鼠との社会は相侵あいおかす必要がなくて、久しく過ぎていたらしい。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)