権謀けんぼう)” の例文
松平伊豆ときた日には、神様へ塩を振りかけて、取って食おうというえら者だからなあ。術数権謀けんぼうの化け物だよ。ああいう奴こそ人間だよ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
肉体の病気をなおしてやって、新生の希望を持たせ、それから精神の教化などとそんな廻りくどい権謀けんぼうみたいな遠略は一さい不要なのです。人事ひとごとではない。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
譎詐きっさ権謀けんぼうや、あらゆる醜い争闘は、むしろ、血のちまたよりは陰険でそして惨鼻さんびだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父と私とは気象の上で、いちじるしく相違しておりまして、父は私を腑甲斐ふがいない者に思い、私は父を権謀けんぼうに過ぎた、鋭さ余る性質として、好もしく思っておりませぬ。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)