椅子ベンチ)” の例文
この一個月ばかり千代子はなぜあんなに欝いでいるだろう、汽車を待つ間の椅子ベンチにも項垂うなだれて深き想いに沈んでいる。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
その椅子ベンチが針の蓆か、何かでもあるやうに、幾度も腰を上げようとした。が、距離は、わづかに二間位しかない。草を踏む音でも聞えるかも知れない。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
その椅子ベンチが針のむしろか、何かでもあるように、幾度も腰を上げようとした。が、距離は、わずかに二間位しかない。草を踏む音でも聞えるかも知れない。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
が、母と青年とは、闇の中の樹蔭の椅子ベンチに、美奈子がたつた一人蹲まつてゐようとは、夢にも思はないと見え、美奈子のゐる方へ、益々近づいて来た。美奈子は、絶体絶命だつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
が、母と青年とは、闇の中の樹蔭こかげ椅子ベンチに、美奈子がたった一人うずくまっていようとは、夢にも思わないと見え、美奈子のいる方へ、益々近づいて来た。美奈子は、絶体絶命だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
今まで、美奈子の方へ真直に進んで来てゐた母達は、つと右の方へ外れたかと思ふと、其処に茂つてゐる樹木の向う側に、樹木を隔てゝ美奈子とは、背中合せの椅子ベンチに、腰を下してしまつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
樹木の茂ったかげにある椅子ベンチを、探し当てゝ、美奈子は腰を降した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)