松代藩まつしろはん)” の例文
土着の煙火師ばかりが三十戸もあるこの戸狩村には、冬のころから、松代藩まつしろはんのお狼火方のろしかたの藩士が五人ほど出張して秋ぐちまでに作り上げる大仕事を督励とくれいしていた。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上田藩も松代藩まつしろはん小諸藩こもろはんも出兵しないのを知っては単独で水戸浪士に当たりがたいと言って、諏訪から繰り出す人数と一手になり防戦したいむね、重役をもって、諏訪方へ交渉に来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……父は依田啓七郎よだけいしちろうといって、信濃しなののくに松代藩まつしろはんにつかえる五石二人扶持ぶちの軽いさむらいだった、実直いっぽうの、荒いこえもたてない温厚なひとだったが、二年まえに卒中を病んで勤めをひき
日本婦道記:糸車 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして、追分の名主のことについて、何がそんな評判を立てさせたか、名主ともあろうものが腰縄こしなわ手錠で松代藩まつしろはんの方へ送られたとはどうしたことか、そのいぶかしさを半蔵にたずねた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)