東家あずまや)” の例文
私は床屋の亭主の口から出た東家あずまやという芸者屋の名前の奥にひそんでいるこれだけの古い事実を急に思い出したのである。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕等は東家あずまやの横を曲り、次手ついでにO君も誘うことにした。不相変あいかわらず赤シャツを着たO君は午飯ひるめしの支度でもしていたのか、垣越しに見える井戸端にせっせとポンプを動かしていた。
蜃気楼 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
東家あずまやってね。ちょうどそら高田の旦那の真向まんむこうでしたろう、東家の御神灯ごじんとうのぶら下がっていたのは
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕等は引地川ひきじがわの橋を渡り、東家あずまやの土手の外を歩いて行った。松は皆いつか起り出した風にこうこうとこずえを鳴らしていた。そこへ背の低い男が一人、足早にこちらへ来るらしかった。
蜃気楼 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)