曲輪ぐるわ)” の例文
晩秋の午後のひざしの明るい御隠居曲輪ぐるわの繩屋の縁さきに出て、十人あまりの若い娘たちがさいぜんからかしましくささやき交わしていた。
石ころ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
数日の後には、興世王の妻、女、童、下郎たちも辿りついて、彼の一家族だけでも五十人近い人間がまた、豊田曲輪ぐるわのうちに住むことになった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある夜、信玄は十数人の家来と、中曲輪ぐるわの密房で、一枚の地図を中にしてひそかに軍議に更けっていた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大坂城普請ふしんのときも、特に、彼女たちのために明るい一小曲輪ぐるわ設計せっけいさせ、黄金のかごに名鳥を飼っているように、折々そこをのぞいては、共によろこんでいたのだった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
横田十郎兵衛は表門へ、大熊備前守は裏門へ、三枝勘解由左衛門は西門へ、曽根十郎兵衛は東門へ、市川梅印は中曲輪ぐるわへ、原与左衛門は東曲輪へ、長坂釣閑は西曲輪へ、各自の持ち場へ帰って行った。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)