放心ぼんやり)” の例文
その間、すこし離れたところに駕籠を守って辰が放心ぼんやり待っていたというから、こいつの眼玉は大きいだけでよくよく役に立たなかったものとみえる。
放心ぼんやりしているところを、不意にこのマルコルムことマクドオナルドを襲って、突嗟に、何らかの形で不用意な告白の言葉を吐かせよう——こう考えて、突如驚かしたのだが
消えた花婿 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「それでも、見たところ百姓たちは元気そうで、家並もしっかりしているじゃありませんか。失礼ですが、ときに御苗字はなんと仰っしゃいますか? 昨夜は放心ぼんやりしてしまっていて……何しろ、あんな真夜中にやって来たものですから……。」
いま、この忌中札を凝視みつめて放心ぼんやり立っている頼母の網膜もうまくに、あの、元旦の殿中の騒ぎが浮び上って来た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
暫時それで地面の小枝を放心ぼんやり掻きはじいていたが、来る途中彦兵衛から受け取った小さな金物を袂から出して眺め終ると、やがてすたすた庫裏くりの方へ向って歩き出した。
苗売りの声が舟松町を湊町の方へ近付いてくるのを、勘次は聞くともなしに放心ぼんやり聞いていた。