その間、すこし離れたところに駕籠を守って辰が放心待っていたというから、こいつの眼玉は大きいだけでよくよく役に立たなかったものとみえる。
放心しているところを、不意にこのマルコルムことマクドオナルドを襲って、突嗟に、何らかの形で不用意な告白の言葉を吐かせよう——こう考えて、突如驚かしたのだが
「それでも、見たところ百姓たちは元気そうで、家並もしっかりしているじゃありませんか。失礼ですが、ときに御苗字はなんと仰っしゃいますか? 昨夜は放心してしまっていて……何しろ、あんな真夜中にやって来たものですから……。」