支那蕎麦しなそば)” の例文
それをそっと小わきにかかえ、ちかくの支那蕎麦しなそばの屋台へ、寒そうに肩をすぼめながらはいって行った。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
悩ましい夢心地で聞いた物音は支那蕎麦しなそばを売りに来たのだと気が着いて見ると、夜の更けたことが知れた。二人の子供等は人形を並べたやうに正体もなくなつて居る。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「君さん。何かたべるか。もう支那蕎麦しなそばぐらいしか出来ないとさ。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
つくねんと立ちながら、ポソポソ話し合っていると、春寒はるさむの夜はヒッソリ更けて、犬の遠吠とおぼえ按摩あんまの笛、夜鳴よなきうどんに支那蕎麦しなそばのチャルメラ……ナニ、そんなのアないが、とにかく、深更である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)