戒律かいりつ)” の例文
先住の高風に比べれば百難あったが、彼も亦一生不犯の戒律かいりつを守り、もっぱら一酔また一睡に一日の悦びをたくしていた無難な坊主のひとりであった。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
学問のための学問や栄達のための修行ならば、あえて僧籍に身をおいて、不自然な戒律かいりつだの法規だのにしばられずに、黄金を蓄えても同じである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戒律かいりつ煩苛はんか鐡鎖てつさ木枷ぼくがの粉々たるも、畢竟身心不二なるがゆゑに、身をして如法たらしむるは心をして如法ならしめ、身をして不如法ならしむる時は
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「あの僧尼達は、自分が手を動かさずして世を渡り、そのうえ戒律かいりつを守らないで、婬を貪り、うんくらい、酒を飲んだので、牛馬にして人に報いをさすところだ」
令狐生冥夢録 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、いった医者の言葉は、私の釣り修業にとって求めても得られぬ天恵の戒律かいりつであると思った。
(新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
すこしも現在に不満と迷いはない。身を難行苦行の床におき、戒律かいりつ法衣ころもに心をかためていた時よりも、かえって、今の身の方が仏身に近い気持がいたすのは一体どうしたものでしょうな。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)