おび)” の例文
そのとき車夫はいっせいに吶喊とっかんして馬をおどろかせり。馬はおびえて躍り狂いぬ。車はこれがために傾斜して、まさに乗り合いを振り落とさんとせり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
扇沢から吹きげられた千切れ雲が気紛れに手を伸して、時々祖父じい岳の額を撫でに来るが、双尖を聳やかした鹿島槍ヶ岳の威容におびえて、慌てたように黒部の大谷に逃げ込む。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)