忸怩ぢくぢ)” の例文
日常瑣々ささの事、猶且なほかつ味はひ来れば無限の趣味あり、無限の秘密あり、無限の教訓ありて、我等をして思はず忸怩ぢくぢとして無謀の行動を敢てせざらしむる者也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
君は立派な人格の所有者だなんかと、過つて言はれでもすると、内心頗る忸怩ぢくぢたるものがあるが、さりとて偽善者だと名乗つてそれを打消すにも価ひしないと自分を侮つてゐる。
愛人と厭人 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
船中の客は別れるのに臨んで姓名を告げるのを例としてゐた。書生は始めて益軒を知り、この一代の大儒の前に忸怩ぢくぢとして先刻の無礼を謝した。——かう云ふ逸事を学んだのである。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)