弥三郎やさぶろう)” の例文
甚内はきっとわたしの首に、声のない哄笑こうしょうを感ずるでしょう。「どうだ、弥三郎やさぶろうの恩返しは?」——その哄笑はこう云うのです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
名は大島弥三郎やさぶろうと申しますかたでござりまするが、思いのほかに悪知恵の深いかたでござりましたゆえ、おぞましきことには主家横領をたくらみ
越後屋の手代弥三郎やさぶろうといって、二十五。主人の佐兵衛が、今から二十五年前、観音様へ朝詣りをした時、雷門の側に捨ててあったのを拾って、そのまま自分の子とも、奉公人ともなく育てたのでした。
それでおれは、岡野弥三郎やさぶろうの言葉をそのまま信じていたんだ。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「いえ、そんな事ではございません。せめてはせがれ弥三郎やさぶろうでも、いてくれればと思うのでございますが、……」
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あなたは御存知になりますまいが、倅の弥三郎やさぶろうもわたしと同様、御宗門ごしゅうもん帰依きえして居りましたから、もとは「ぽうろ」と云う名前さえも、頂いて居ったものでございます。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)