引潮ひきしお)” の例文
「木戸のすぐ外、土蔵の下のところにほうり込んでありましたよ。引潮ひきしおになると見えるくらいで、——もっとも傷口に比べると少し細刃でしたが」
死骸しがいはその日終日ひねもす見当らなかったが、翌日しらしらあけの引潮ひきしおに、去年の夏、庵室あんじつの客が溺れたとおなじ鳴鶴なきつるさきの岩にあがった時は二人であった。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)