彼はすばやくみきわめをつけ、けんめいに人波を押し分けて神田川の岸へぬけ、そのまま平右衛門町へいえもんちょうから大川端へと出て来た。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
江戸の大通だいつう、札差百九人衆の筆頭に据えられる大町人、平右衛門町へいえもんちょうの伊勢屋新六が、本所竪川筋たてかわすじの置材木の上から、百両もする金銀象眼ぞうがん鱮竿たなござおを垂れているところを
……中通りをまっすぐにつき当ると第六天だいろくてんの社である、柳原へはそこを右へ曲るのだが、おせんは左へ折れ、平右衛門町へいえもんちょうをぬけて大川端へ出た。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
八五郎のガラッ八が、旅籠町はたごちょうの泉屋へ行ったのは、酉刻むつ(午後六時)少し過ぎ。利助の子分は五六人、平右衛門町へいえもんちょうの隠居泉屋と、旅籠町の泉屋の本家に別れて、左右前後から目を配っておりました。
男はときどき鍋を持ち替えながら、自分が風上のほうへまわって、往来を右へ曲り、もうかなり積って白くなった道を、平右衛門町へいえもんちょうのほうへとはいっていった。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)