巾着切きんちやくきり)” の例文
「解つたよ。三百八十兩の大金を巾着切きんちやくきりにやられて、主人への申譯、言ひ交した女と一緒に、ドブンとやらかさうといふ筋だらう」
何故と云ひねえ。同じ悪党とは云ひながら、押込みよりや掻払ひ、火つけよりや巾着切きんちやくきりが、まだしも罪は軽いぢや無えか。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「おや、おや、おや、——それぢや八五郎親分、お前さんは泥棒や巾着切きんちやくきりを逃がしてお役目が濟むといふんですか」
春から大した御用もなく、巾着切きんちやくきりや空巣狙を追ひ廻させられて、錢形の親分も少し腐つてゐた最中だつたのです。
「が、天下靜謐せいひつだな、今年になつてからは、ろくな巾着切きんちやくきりも出て來ないよ。謀反なんかあるわけは無いし」
「立派だつてやがる、——成程それだけサバサバして居ると、巾着切きんちやくきりが車掛りで攻め寄せても驚かねえ」
いつも錢形の親分と一緒で無きや、ろくな巾着切きんちやくきりも縛れないと思はれると、口惜しいぢやありませんか
知つてるよ。大した惡黨でもなく、調法だからと言つて、お前は懇意こんいにして居るやうだが、相手はゴミのやうな男でも、人の懷中を狙つて暮す巾着切きんちやくきりだ。お上の御用を
「彦兵衞——薄菊石うすあばた巾着切きんちやくきりは誰だ。早い方がいゝ。今から手を廻したら、金が戻るかも知れねえ」
「お父さん、それは、違ひますよ。三百八十兩は巾着切きんちやくきりに取られ——」
「何だ、女巾着切きんちやくきりのお兼ぢやないか」
巾着切きんちやくきりにやられたのだ」