小胆者しょうたんもの)” の例文
柿丘秋郎の正体もつきつめて見れば、此の種の人物だったが、割合に小胆者しょうたんものの彼は、幸運にも今までに襤褸ぼろをださずにやってきたのだ。これは僕がねたみごころから云うのではない。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
臆病な人見知りをする性質の私は、自分から頼る気にならない人とは口一つ満足にはきけません。私はそんな小胆者しょうたんものですが、その好意が身に余るほど解るので夫人の許をしばしば訪れます。
聖アンデルセン (新字新仮名) / 小山清(著)
「よかろう。だが、禅とは、大悟たいごのことだ。おまえみたいな小胆者しょうたんものでは、大悟はおろか、迷って見ることもできはせぬ。——まあ、養子の口だな。お父上も心がけておるらしい。いい養子先があったら行く事だ」
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕は至って小胆者しょうたんもので人と朝晩の挨拶あいさつを交わすことさえ満足に出来ない奴です。先生だからこそ、しょっぱなからこんな風に始められたのです。僕は先生には何んでも聴いていただけるような気がします。
わが師への書 (新字新仮名) / 小山清(著)