寥々りようりよう)” の例文
さては何の怪むところ有らん。節は初夏のだ寒き、この寥々りようりようたる山中にきた宿とまれる客なれば、保養鬱散の為ならずして、湯治の目的なるを思ふべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
恨むと見ゆる死顔の月は、肉のきれの棄てられたるやうにあかける満地の瓦を照して、目にるものは皆伏し、四望の空く寥々りようりようたるに、黒く点せる人の影を、彼はおのづか物凄ものすごく顧らるるなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)