寒威さむさ)” の例文
ふるへるやうな冷い風に吹かれて、寒威さむさ抵抗てむかひする力が全身に満ちあふれると同時に、丑松はまた精神こゝろ内部なかの方でもすこし勇気を回復した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何もかも今は夜の空気に包まれて、沈まり返つて、闇に隠れて居るやうに見える。それは少許すこしも風の無い、しんとした晩で、寒威さむさは骨に透徹しみとほるかのやう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)